2019年、改正文化財保護法が施行された。現代日本は文化遺産や文化財を地域再生や振興の地域資源にして、それを推し進めようとしている。行政の仕組みや制度もまた地域資源活用のためにシフトしつつある。 文化遺産や文化財は、本来、保存(保護)されるべきものである。しかし、ただ保存だけでは地域社会にともにあることはなく乖離していくだけである。文化遺産や文化財のこれからは、地域社会のなかで本来持っている歴史的価値を保ちながら、新たな価値も付与され生き続ける方向へ向かう。 こうしたなか、地域に住む私たちは、いかにして、この文化遺産や文化財にまなざしをそそぎ共存・継承すべきなのか、社会的な課題としてますます問われることになる。本書は、歴史の問題としてときには難しい存在であったこの文化遺産や文化財を、私たちにふつうな見方や考え方をもって照らしなおし、より身近な存在として接することができないか、試行したものである。 その方法が、著者独特の”ずらし”の視角というものである。”ずらし”の視角の世界に一度浸ってみると、文化遺産や文化財が皆さんの日常生活のなかに、いつのまにかふつうに存在しているかもしれません。
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